海街

先日是枝監督の「海街diary」がテレビで放送されていて、以前に見たことはあったけど、何となくつけて見ていた。改めて見ると、まず広瀬すずが幼い。前に見たのそんなに昔じゃないのにな、と思うけどすごく幼く感じる。それと、やっぱり四姉妹みんなきれいで仲良くて、こんな四姉妹おるかいな、と思ってしまう。舞台となっている鎌倉の四季はすごくきれいで、どの場面も瑞々しい。まあ四姉妹の関係性も含めて、海街diaryはきれいすぎる気がする。でも鎌倉にもう一度行ってみたいな、と思った。

昨年、鎌倉に旅行に行った。思っていたよりも海が近くて緑も多い。古い街並みや神社も至る所にあって雰囲気がある。その点は京都に似ているが、海がある分鎌倉のほうがずっと開放的な感じがする。何より印象的だったのが長く続く遠浅の海。由比ガ浜は湾曲した海岸沿いにあり、波は静かで、浜から遠くのほうまでひたひたと浅い海面が続いている。その日は薄曇りで、日光を反射する海面が遠くまで広がり、曇りの散乱光と相まってどこか現実的でないような光景だった。黙ってずっと見ていたいような、でも普段話さないようなことを誰かと話したくなるような…浜を歩いているとそんな気持ちがしてくる。写真ではあまり伝わらないかもしれないけれど、下がそのときの写真。鎌倉を舞台にした物語はいろいろあるが、「ビブリア古書堂の事件手帖」という小説でも鎌倉が細かく描かれていて、登場人物が海辺を歩くシーンがある。これも鎌倉の空気感が文章によく表れていて、行ってみたいと思わせるものだった。鎌倉は、物語が生まれそうな、書きたくなるような雰囲気が確かにある。街と自然が合わさって風情があるだけでなく、江ノ電が市民の足として走っているように、そこに暮らす人々の生活感がある。鎌倉の人々はどんな暮らしをしているのだろう。今年も観光客が増えてきたな、とか話しているんだろうか。ずっと関西で暮らしてきたから、関東で生活したいとは正直あまり思わないけど、鎌倉には一度住んでみたいと思わせる魅力がある。

京都の鴨川が黄緑のイメージだとすれば、鎌倉の海街は薄い青の色合いのイメージがある。多分に映画の影響を受けているとは思うけれど、薄いブルーのフィルタを通して見ているような感じがする。神社も京都のものとはどこか違っている。武士の時代に作られたものだからかシンプルでこざっぱりしていて、でも静けさがあって独特の空間になっている。

旅に出て、普段見慣れない場所を歩く。それだけでも十分楽しいけれど、時々これはと思う光景に出くわす。その瞬間に心は捉えられ、自分の風景としてずっと残る。何に惹かれるのかははっきりとは分からない、それでもそこにずっといたいと思わせる何かがある。みんなそれぞれ、そういった心の風景を持っていて、折に触れて思い出して、記憶や感情を呼び起こすものなのかもしれない。これが私のアナザースカイ――って言いたい。笑。ああ、どこか遠くへ、知らない街に行ってしまいたい、とふと思ったりする。

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