ああ夏休み

大学院生に夏休みはない。いや、なくはないが、まとまった休暇というよりも、普段より休みやすい期間と言ったほうが正しい。実際、旅行に行ったり、自由に遊ぶことは自分の研究室では可能だが、研究の進捗は0というわけにはいかないし、この夏はインターンもあるし、果たして夏休みといって良いのか…。そんな中、この一週間は異常な暑さになり、一気に夏本番だ。祇園祭は前祭が終わってこれから後祭、各地では花火大会も開かれ、世間は夏休みモード。「夏」の到来はひしひしと感じるが、暑いだけで、昔のように素直には楽しめない。あれだけ楽しみにしていた「夏休み」はいったいどこに…。

昨日は夜になると暑さが少し和らいできたため、近所の母校の小学校で開かれている夏祭りを覗きに行った。大学生くらいの若者はあまり見かけなかったが、小・中・高校生、小さい子を連れた親達、近所のお年寄りなどで大いに賑わっていた。たこせんを売る屋台やスーパーボール掬い、射撃など、日本のどこにでもある普通の祭りだが、それはまぎれもなく「夏休み」の光景だった。小学生はちょうど夏休みが始まったところで楽しくて仕方がないのか、人ごみの中を元気いっぱいに走り抜けていた。十年以上前には、同じように自分も夏休みが来たという事実だけでわくわくして、友達とはしゃいで、スーパーボールを掬うのに必死だったな。あの「夏休み」の始まる前後が一番楽しい現象に名前を付けたい。

遠い昔に自分にもこんな夏休みがあったなと懐かしく思うけれど、実際に祭りをやっているグラウンドに入ってみても、一周したら、帰るか、という気持ちになる。祭りといっても、花火があるわけでもなし、屋台が少し並んでいるだけだ。それをただただ無邪気に楽しんでいた、あの頃の「夏休み」はもう手の届かないところにあるように感じる。今まで基本的には楽しんで生きてきたけれど、純粋な「楽しさ」でいえば、小学生の頃が一番だった気がする。友達といろんな遊びをして、イベントにわくわくして、毎日が一瞬で過ぎていた。楽しいことだけではなくて、当時は当時で恐れていたことや、子供なりにストレスに感じていたこともあったとは思う。それでも、のびのびと無邪気に過ごした時間は、今の自分の中の確かな土台になっている。

海、プール、花火、そうめん、すいか、高校野球、……夏の風物詩はあげてもきりがないが、その中でも、個人的には地元の小学校の祭りが「夏」の概念に一番近い。祇園祭でも、天神祭でもなく。昔と変わらない小さな祭りを覗いて、自分の中にも夏がやってきた。

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