平熱

人からよくテンションが低いと言われる。まあ高いときはあんまりないけど、いつも低いというわけではない、と思う。通常運転のテンションがやや低めで、そこからの振れ幅が小さいからそういうふうに見えるのかな。ともあれ、自分としては普通のテンションのつもり。何かに取り組んだり、物事を受け止めるときも、喜びすぎたり悲しみすぎたりせず、なるべく普通の感覚で接しようとしている。

考えてみたら、自分が好む本とか漫画、映画、ドラマは、熱くなりすぎず、かといって冷めすぎてもいない、その絶妙なバランスのものが多い気がする。これは完全に個人の趣向だけど。笑。例えば、「からかい上手の高木さん」は毎話青春ポイントがあっても、そこで熱くなりすぎず、ふっと余韻を残すように終わるし、「ビブリア古書堂の事件手帖」では、登場人物の平常のテンションの中での悲喜こもごもが、さりげなく、でも丁寧に描かれていている。そういう、いわば「平熱」のトーンの作品に惹きつけられる。「君の名は」とかの新海監督の作品はテンションちょっと高め、というか乱高下してる感じがする。笑。まあ「カメラを止めるな!」みたいなドタバタしたコメディも純粋に面白いとは思うけど。

「平熱」の状態はリアルに近いわけだし、そのテンションだからこそ伝わることがある。最近新聞に、東日本大震災の津波の被害を受けた市庁舎を存続させるかどうか、市長と地元住民の間で議論になっているという記事があった。地元住民の中でも、被害を後世に伝えるために残すべきだという意見もあれば、辛い記憶を思い出したくないから取り壊してほしいという意見もある。双方の主張があり、意見はなかなかまとまっていないらしいが、両方の気持ちの間で揺れている人もいる。「残すも涙、壊すも涙。それが私たちの正直な気持ちなんです。」というある住民の言葉が心に残った。これはテンションというよりも、現実にそこに生きている人々に寄り添う感覚、といったほうがいいかな。そういう感覚を持って取材しているからこそ、リアルな人々の声をすくいだせるのかもしれない。

こういう感覚を持って、いろんなことに接したい。――もう一度言うが、テンションが低いわけではない。いたって「平熱」のつもり…。

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