近所の異世界を散歩する

stay homeな日々が続いている。大型連休は中盤といったところだろうか。まだ5日も家に閉じこもらないといけないと思うと長く感じる。休みが終わっても在宅勤務だけれど…。

外に出にくい雰囲気の中、家の付近を散歩したりジョギングしたりしている人を最近よく見かける。自分も散歩するくらいしか外に出ることがない。しかし家の周りは見慣れているし、ただ歩くのもつまらない。そこで、もう一歩踏み込んで、できるだけ通ったことのない道を探索して散歩してみることにした。

まずいくつかのルールを決めた。スマホは家に置いて出発し、地図を確認せずに、気の赴くままに歩く。いつも見慣れた道から、今まで通ったことのない道、細い路地に足を踏み入れる。引き返すことはしない。分かれ道でどっちも知らない道だったら、面白そうだと直感的に思う方に進む。そうして歩いて行った先には…

あれ?こんな場所あった?目の前には、ありがちな日本の住宅街だが、よく見ると全然知らない景色が広がっている。いつも通る道からちょっと逸れただけだから、そんなに遠くへは行っていないはず。脳内地図を見ながら、見知った道に合流するよう歩を進める。そうすると、思いもしなかった曲がり角が現れ、仕方なく適当に曲がる。しばらくするとまた曲がり角にぶつかり……。気付いたら、完全に方向感覚を失っていた。(方向音痴でなければこんなことにはならないかもしれないが、それでも無秩序に作られた日本の住宅街をなめてはいけない。) 引き返そうにももう道が分からなくなっている。

所詮近所なんだから、歩いていたらそのうちどこか知っているところに出るだろう。そう思って周りを見渡してみると、どこにでもあるような一軒家でも表札に工夫(クセ)があったり、やけにでかい高級車が停まっていたり、二階の窓から大量のぬいぐるみがこちらを見つめていたりしていて、バラエティに富んでいることに気づく。人気のない道の先に廃墟が現れたり、突然未知の宗教施設の敷地に入ってしまったりもする。自分の家から1kmも離れていないほどの土地に、全然知らない世界が広がっている。ファンタジーの世界や外国の街並みでなくても、近くをよく見れば面白いものに溢れている。

何だか楽しくなってきて、興味のままに歩き回っていると、どこからか夕ご飯のにおいが漂ってきた。世界で一番平和なにおいなんじゃないだろうか、と思う。空は夕暮れの赤みが引いて、透き通る青が暗くなってきた。そろそろ帰ろうか。でもどちらに進めばいいか分からない。大きな道路に出そうな方に進んでも、知らない場所リストが更新されていく。若干焦ってきたところで、ようやく大通りに出た。何のことはない、いつもバスで通る道だったが、まさかここに出るとは思わなかった。確かに距離は家からさほど離れてはいない。ずいぶんぐるぐる回った経路を歩いてきたみたいだ。息をつき、見慣れたバス通りを歩いて帰る。

とまあ、発見がたくさんあり、世の中(近所)にはまだまだ知らないことがあると実感した。長い休みのうちに、気の向くまま散歩するのも悪くない。迷ってしまっても、所詮は近所、どこか知っているところに辿り着くはず。不思議の国に迷いこんでしまわなければ。

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